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男性と女性が、ちょうど中間地点まで階段を下りてくると、下から昇って来た1人の男性が現れた。
喪服に身を包んでいる、栗色の髪を短髪にした、切れ長のキリリッとした目をしている凛々しい顔をした、青白い顔いろの男性。
スラっとした長身と言いたいところだが、どちらかと言えば痩せすぎている病人のような感じを受ける。
手には白い薔薇の花と綺麗な百合の花を持っている所を見ると、どうやら王家のお墓に来たようである。
下から昇って来た男性とすれ違う時、降りて来た男性は女性を引き寄せ隠すように、なるべく目を合わさないように少し隅に寄った。
気づかれないようにすれ違う瞬間・・・
「あの・・・」
声をかけられ、2人は足を止めた。
「すみません、急に呼び止めてしまって。もしかして、王家のお墓にお参りして頂いてのですか? 」
「あ、はい。申し訳ございません、勝手に王家のお墓に立ち入ってしまいまして」
男性が女性を背に隠して代わりに答えた。
「いいえ、王家のお墓は自由に、どなたでも手を合わせて頂けるようにしておりますので、お気遣いなくお立ち寄り頂いて構いません。こんなに朝早くに来て頂いて、有難うございます。・・・申し遅れました、私はこの国の国王ラディスです。初めまして」
ラディスの名前に男性の目が少し怯んだ。
「あの、お名前を教えて頂けませんか? 」
ラディスに尋ねられると、男性はハっとした。
「大変失礼いたしました、国王様とは存じ上げず。私は、南グリーンピアトにて投資家をしておりますミーシェルと申します」
そう言いながら、男性ことミーシェルはジャケットの内ポケット内側から名刺を取り出し、ラディスに渡した。
名刺を受け取ると、ラディスはもう一度ミーシェルを見た。
「南グリーンピアトから、わざわざ来て下さったのですか? 」
「あ、いえ。ちょうど、グリーンピアトに仕事の関係上戻ってきましたので、1番にお参りさせて頂きました。皇女様が、お亡くなりになられたと、お聞きしましたものですから」
「そうだったのですね。娘の為に、わざわざ有難うございます」
「いいえ、突然のことに、私も非常に驚いていた所です」
「はい・・」
ラディスは女性を見つめた。
ミーシェルの背に隠れるように顔を背けている女性が、気になっているようである。
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