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「コスモ」
森に入ると、私はすぐさま愛しい人の名前を呼んだ。
それから、耳を澄ます。
もうじき聞こえてくるはずだ。
私を呼ぶ、甘く、穏やかな囁きが……。
「……コスモ?」
もう一度、呼んでみる。
おかしい。こんなこと、一度もなかったのに。
「ねえ。いるんでしょ? からかわないで」
私は、木々の間をすり抜け、更に進んだ。
「コスモ? どこにいるの?」
返事がない。
「冗談はやめて! いい加減にしないと怒るよ!」
ガサッと、木の陰から音がした。
「コスモ?」
「アメシスト」
細い声が聞こえた。
「どうしたの?」
声のする方に駆け寄ると、そこには、木にもたれて座るコスモの姿があった。
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