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そこには、あの時と同じ、紫色の髪をしたフランス人形のような女性が映っていた。
その、紫の瞳に語りかける。
「お願い。コスモの過去を映して。コスモの生前の記憶を……映して……ください……」
震える声で、何度も願った。しかし、いつまで待っても泉は、私の姿しか映してくれない。
「やっぱり……。そんな都合の良いこと……」
私の目から涙がこぼれた。
その一雫が水面を揺らし、波紋を広げる。徐々に広がっていく波紋はやがて、一つの影を形作った。
「え?」
そこにはもう、フランス人形はいなかった。
映されたのは、黒髪の女性。
「わ…た…し?」
私は思わず、腕を伸ばした。同時に、泉の中の女性も腕を伸ばす。
そして、その手に触れた途端、私はそのまま、泉の中へと引きずり込まれた。
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