6ct

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「琥珀さんは、常にあなたの身を案じております。危険な目に遭いはしないか、良くない事に巻き込まれはしないか、いつでもどこでも、気にかけていらっしゃいます」 「どうして、そこまで……」 「大事だからですよ。あなたの事が。この世界の何よりも」 「アドバイザーだから?」 「いえ。それだけではありません」 「どういうこと?」 「それは……」 タンザナイトの目が、遠くに向けられた。その視線の先には、清麗(せいれい)の丘があった。 「(えにし)ですよ」 「(えにし)……」 「そう。あなたと琥珀さんはきっと、とても深い(えにし)で結びついているのです。あなたのアドバイザーになったのも、偶然ではありません。お二人はきっと、運命のお導きによって出会われたのではないかと思います」 「運命……」 「そう。だから……」 視線を戻すと、透明感のある表情でタンザナイトが微笑んだ。 「あなたはきっと、戻ってくる。どこへ行っても。何があっても。あなたは必ず、戻ってくる。いえ。戻って来なければならない。大切な、琥珀さんの元へ」 「タンザナイト……」 「それだけを、伝えに来ました。今までありがとうございました。短い間でしたが、あなたと過ごした日々は、とても楽しくて、刺激的でした」 タンザナイトが、右手を差し出した。その手に、私も右手を重ねた。 あの日、湖のほとりで初めて会った日と同じ、暖かくて、優しい手だった。
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