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リンゴーン。
リンゴーン。
リンゴーン。
……。
「ごきげんよう。アメシスト」
「ごきげんよう。琥珀さん」
いつもの今日が始まる。
「何かお変わりありませんか?」
「えーっとぉ。『想いの泉』を読み終えました」
「ああ、あの小説」
琥珀が、両手をポンと叩いた。
湖のほとりで行われた密談から、数日が経過していた。
あれから私は、二人の忠告に従い、コスモに会いに行くのをやめた。
時間が経つにつれ、冷静に考えられるようになってきたのかも知れない。
コスモはやはり、タンザナイトの言う通り、油断させて近付き、最終的には人間界への道連れにする、彷徨える魂だったのかも知れない。
そう考えると、全てつじつまが合う。あの森にいた事も。アドバイザーがついていない事も……。
それに私は、これ以上琥珀さんに迷惑をかけるわけにはいかない。ただでさえも、私みたいな落ちこぼれの魂を担当させられて、苦労しているのだから。
近頃、タンザナイトの姿をあまり見かけなくなった。
きっと、瞑想に入っているのだろう。
そのうち、ガーネットだって……。
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