5.ファースト・コンタクト

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 伸二は洋弓に矢を通し、鉄砲隊に狙いを定めた。 「あの指揮官は谷地頭が何とかしてくれる。俺は鉄砲隊の注意を引く。トシ、おかしな気配があったら、すぐに教えてくれ」 「了解」  俊彦は再び視線を青柳校長に戻した。土井副総裁は手に持った棒を上下に振り回して、激高していた。校長はその迫力に押されて、後ずさりしているように見えた。ただ、谷地頭先生は胸を張って仁王立ちし、一歩も動いていない。  青柳校長が大きく一歩下がった瞬間、土井は腰の長刀を抜き、上段に構えた。 「危ない」  だが、次の瞬間、地面に倒れたのは副総裁の土井だった。谷地頭先生が電光石火でメンを一本決めたのだ。校舎を揺るがすような歓声が上がった。 「先生、危ない。すぐ逃げて」  鉄砲隊は指揮官が倒れたのを見て、照準を絞っているように見えた。すぐにでも発砲する気配だ。 「伸二、谷地頭が危ない」  俊彦がそう伝えた直後、一本の矢が風切音を残して鉄砲隊に向かって一直線に飛んだ。 「うわっ」  叫び声があり、鉄砲を構えていた兵士が一人倒れた。伸二はすぐに二本目の矢を構え、速射した。  再び命中。不意打ちを食らった鉄砲隊は完全に浮足立った。だが、何人かはこちらに向けて鉄砲を構え直した。 「みんな、窓から離れて。撃ってくるかもしれん」  俊彦が怒鳴った。伸二も含め、全員がすぐに窓から身を隠した。  その直後、教室の別の窓から鉄砲隊に向けて何かが投げ込まれた。野球のボールだ。直後に叫び声がして、兵士が倒れた。こちらもしっかりとデッドボールしたようだ。 「大輔」  投げたのは陣川大輔だった。兵士は気の毒だ。大輔は百四十キロ近いストレートを持ち、県大会のベスト4まで一人で投げ抜いたエース。球の速さはもちろんだが、何より評価されているのは、正確なコントロールなのだ。
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