5.ファースト・コンタクト

4/12

225人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
 伸二はニヤリとして、すぐに立ち上がって、三射目を放った。これも兵士に命中した。さすがインターハイ出場の選手。距離が近いとはいえ、全射命中だ。  しばらくの間、伸二と大輔が交互に鉄砲隊を攻撃した。鉄砲隊は何発か応射してきたが、校舎の壁に小さな穴を開けるのが精一杯の様子だった。応援に駆け付けた巽と恭二郎が別の教室から矢を放ち始めると、鉄砲隊の兵士たちは完全に自制心を失い、バラバラになって敗走した。副総裁の土井もいつの間にか姿を消していた。 「危なかったな」  俊彦が伸二に声を掛けた。伸二は額から玉のような汗を流し、息がかすかに荒かった。 「ああ、何とか追っ払えたようだな」  そう話す伸二の表情はなぜか冴えない様子だった。 「どうした? 大活躍だったのに、何だか浮かない表情だな」  憑りついた何かを振り払うかのように、伸二は大きなため息を吐いた。 「人を狙ったのは初めてだ。もちろん人に当てたのも。いい気分とは違うな」 「そりゃそうだ。でも、お前たちがああしなかったら、谷地頭や校長先生は撃たれてたかもしれん」  俊彦はさっきのヒーローを懸命に励ました。 「そうなってたら、あの侍みたいな連中は学校に突入してきただろ。伸二たちはそれを防いだんだ。気にしたら駄目だ。矢が当たった人たちだって、あれで死んだ訳じゃないだろ」 「ああ、急所は外した。狙ったのは腕と足だ。驚かせて注意を逸らせようと思って、必死だった」  興奮が少し収まり、やっと伸二は落ち着いてきたようだ。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加