5.ファースト・コンタクト

5/12

225人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
 しばらくして、七組の教室に、青柳校長と谷地頭先生が現れた。 「さっきはありがとう」  教壇に進んだ校長は、深々と頭を下げた。 「武器を持った相手に、あんな形で接したのは、うかつだった」  青柳校長の顔はまだ少し青ざめているように見えた。隣の谷地頭先生もいつになく神妙な顔つきをしている。 「校長先生」  俊彦が手を挙げた。 「山形君」 「あの男たちは何者なんですか? いきなり現れて、先生に向かって日本刀を抜くなんて…。あれって本物の刀だったんですよね」 「ああ、真剣だった」  答えたのは谷地頭先生だ。 「こっちが反撃すると思っていなかったんだろう。不意打ちだったから一撃で倒せたが、次はどうなるか分からん。相手はすごい殺気だった」  谷地頭先生は「錬士七段」という称号を持っている。誰でも簡単に得られる資格でないことは、剣道部の練習を見ればひと目で分かる。谷地頭の構えは泰然として隙がなく、足さばきや身のこなしはスムーズで美しい。地区大会では負けなしとされている剣道部の猛者たちも、先生の前では子供同然だった。実績と威圧感はオーラとなって常に体全体から発散されている。だから、生徒たちは高圧的な指導や言動にも素直に従うのだ。その谷地頭が「すごい殺気」というからには、土井利恒と名乗った男は、本当に青柳校長を切り殺すつもりで刀を抜いたのだ。 「伸二たちが鉄砲隊を攻撃しなかったら…」 「ああ、学校は今頃占領されてたかもしれんなあ」
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加