5.ファースト・コンタクト

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 生徒たちは谷地頭先生の言葉に沈黙した。さっきの出来事を理解しようと、頭の中は激しく回転している。なのに、結論は全くでない。当たり前だ。答えを出すには余りにも情報が不足していた。生徒たちは言葉を発することができず、全員が金縛りにあってしまったかのようにおし黙っていた。 「おい、山形」  少しの時間が経った後、谷地頭先生が沈黙を破った。 「はい」  俊彦は起立した。さっきからアドレナリンが噴出しっぱなしだったせいか、喉がカラカラに乾いていた。返事はひどいかすれ声になった。 「職員室に来い。学級委員と部活の主将を全員集めろ。十五分後に会議を開く」  そう言い放つと、青柳校長と谷地頭先生は七組の教室を後にした。  俊彦はすぐに行動を開始した。まず、伸二に声を掛けた。 「俺はクラスの学級委員に声を掛けて回る。伸二はキャプテンを集めてくれるか」  まだ少し放心状態の伸二は、反応がやや鈍い感じがしたが、「ああ、すぐに行く」と答え、椅子から立ち上がった。  職員室は、体育館を除くと、学校の中で最も広い部屋だ。五十人以上いる先生たちの机が並び、窓際には十人くらいで会議のできるテーブルがある。この上でプリント整理やポスター作りの作業もできる。俊彦たちが息せき切って職員室に集まった時、先生たちは既に全員が席に着いていた。部屋に足を踏み入れた瞬間、室内の空気が異様に張り詰めているのを感じた。 「どこでもいい。空いてる席に座って」  青柳校長が生徒たちに向かって言った。生徒たちが座るパイプ椅子は、入口付近と窓側など数カ所に分散して並べられていた。学級委員と部活の主将は無言のまま、それぞれ席に着いた。とても軽口を叩けるような雰囲気ではなかった。
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