5.ファースト・コンタクト

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 三階にはバスケットボールやハンドボール、バドミントン、テニス、卓球などの運動部員が陣取った。校舎の周りでかき集めた大量の石ころやレンガを運びこんである。3階からの投石も、相手に相当なダメージを与えるに違いない。  万一、バリケードが破られたことを想定し、白兵戦の要員として召集されたのは剣道部だ。当然、指揮官は谷地頭先生が務めた。生徒は防具を身に着け、手には木刀を携えた。校舎の両端にある階段が防衛ラインで、椅子と机で築いたバリケードの内側に陣取った。  火を放たれることも想定された。一チーム五人の消火隊を十チーム編成し、それぞれに可能な限りの消火器と水を配備した。これで校舎のどこで火災が起こってもすぐに駆けつけることができる。  残る生徒は四階の教室に集められた。だが、ただじっとしているだけではない。一部は懐中電灯を改造したサーチライトを担当した。残る全員も投石隊か消火隊のいずれかのバックアップメンバーになっていた。  屋上では地学部員たちが天体望遠鏡を構えて周囲を警戒している。これなら、相当遠くの敵でも早期に見つけることができる。  俊彦にはよく聞き取れなかったが、化学の鍛冶真生(かじ・さなお)先生が何か特別の任務を命じられたらしい。 「化学部の生徒をお借りしてよろしいでしょうか」  青ざめた顔つきで、鍛冶先生が校長に投げ掛けた言葉が耳に残った。  女子生徒の何人かは学食の調理室で夕食の準備に当たった。
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