6.敵襲開始

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「何とか二十発くらいは用意できました」  息を切らしながら職員室に駆け込んできたのは、化学の鍛冶先生だった。特別任務を与えられていたはずだが、その中身は分からない。だが、表情を見る限り、成果は挙げた様子だ。 「ですが、アルミニウムが足りない。アルミさえあれば、もっと作れるんですが…」 「それなら先生、いい案があります」  青柳校長が机から財布を取り出した。中から取り出したのは一円玉だった。 「みなさんも協力を。硬貨をこのようなことに使うのは法律違反ですが、今はそのようなことを言っている場合ではないでしょう」  一円玉はコンビニの袋に集められた。職員室を一周する頃には、袋の中には何百枚も入っていそうなくらいだった。先生方の机には山ほどの一円玉が眠っていたようだ。鍛冶先生はその袋を大事そうに抱えた。 「これであと十発以上は作れる。そうだ、山形」  鍛冶先生は俊彦に向き直った。 「悪いが、生徒たちからも一円玉を集めておいてくれ。できるだけ多い方がいい。だが、一円じゃなきゃ駄目だ。五円や十円はいらん。百円や五百円も。これは寄付じゃない。一円玉が必要なんだ」  鍛冶先生はそう言うと、返事を待たずに職員室を飛び出して行った。俊彦があっけにとられていると、 「あれは陣川大輔に預けるべきでしょうな」  青柳校長の声が耳に入った。 「こんなことはしたくないが、願わくば相手がこれに驚いて退却してくれたらいいのですが…。いずれにせよ数は少ない。タイミングを見極めて、効果的に使わねばなりません」  頷きながら話す青柳校長の神妙な表情を見て、俊彦の心はにわかに落ち着きを失った。  職員室を後にした足で、俊彦は屋上に向かった。外の寒さは尋常ではなかった。それもそのはず雪が舞い始めていた。 「どんな感じだ?」  俊彦は宇賀浦に訊いた。宇賀浦は一心に望遠鏡を覗いている。 「さっきの軍隊とおんなじくらいの集団が、まっすぐこっちに向かってる。先頭の鉄砲隊だけでも昨日の倍はいる」  俊彦は足元から力が抜けていくような気がした。昨日は伸二や大輔の活躍があったが、あれはラッキーパンチだ。相手もばかじゃない。こちらの攻撃を想定して、今日は万全の態勢を取ってくるはずだ。
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