6.敵襲開始

6/8

225人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
 伸二の見立ては正しかった。今度は大砲の発射音の後、すぐに鋭い風切音がした。今までに聞いたことのない不気味な音は、俊彦の胸の内を恐怖で満たした。  衝撃は想像を超えていた。校舎全体が巨人の大きな手で激しく揺さぶられたような感じがした。最初の一発は南側の壁を直撃した。  時を経ずして二発目が発射された。ガラスの割れる衝撃音が校舎中に響き渡った。ひとつ上の三階の方から女子の悲鳴が聞こえてきた。 「ちょっと様子を見てくる。みんなは窓から離れて廊下に逃げろ」  俊彦は三年七組の教室を離れ、薄暗い廊下を全力で走った。校舎の南側の階段に着くと、三階から大勢の生徒がころげ落ちるように下りてきた。 「やられた。二年五組の教室だ」  三階にはスポーツ部の投石部隊が陣取っている。直撃を受けた五組の教室にも数人がいたはずだ。 「けが人は」  俊彦が聞くと、煤と埃で顔を真っ黒にした男子が吐き捨てるように言った。 「そんなの分からん。教室の中はメチャメチャだ」  俊彦は近くの三年三組の教室に駆け込んだ。ここにもアーチェリー部や弓道部員が待機していた。皆、恐怖で引きつった顔をしていた。 「南側は危険だ。北側に避難しよ」  俊彦の呼び掛けに、全員が立ち上がった。弓や矢を抱えて、すぐに北側の教室に移動していった。  その直後、もぬけの殻になった三年三組の教室に弾が飛び込んできた。壁を突き破る猛烈な衝撃とともに、強力な風圧が教室の扉を紙切れのように吹き飛ばした。廊下にいた俊彦はその場に倒れた、というよりなぎ倒された。  硝煙の匂いの中、俊彦はなんとか立ち上がり、吹き飛ばされた扉の跡から教室の中を見た。さっきまで窓があった場所に、直径五メートルほどの穴が開いていた。壁際に立て掛けていたロッカーは大きな力でちぎられたかのように、上半分がきれいになくなっていた。倒れた机や椅子の多くは、パイプが無残に折れ曲がり、原型をとどめていなかった。 「こりゃ、ひでえ…」  俊彦は直撃を受けた二階の教室に生徒がいたことを思い出した。 「大変だ」
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加