6.敵襲開始

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 階段を上がってすぐの二年五組の前には、すでに大勢の生徒や先生が集まっていた 「いやあ~」  教室の中で、この世のものとは思えない女子の叫び声が上がった。直後に廊下に飛び出してきた男子は、その場で膝をつき、胃の中のものを戻していた。よく見ると、何人もの男子が同じように吐いていた。 「松風先生を呼んで来い」  誰かが怒鳴っていた。いつもだと保健室は一階にあるが、危険だということで、最上の四階に引っ越した。養護の松風先生はそこで待機している。女子が一人、階段を駆け上がっていった。 「救助も大事だけど、校舎南側の生徒を避難させなきゃ、まだまだ撃ってくるぞ」  俊彦が誰に向かうともなく言った。すぐに答えたのはバスケット部の北浜博(きたはま・ひろし)だった。 「そうだ。山形は二階頼む、俺は四階を回る」  北浜はすぐに階段を上っていった。直後に北浜の怒鳴り声が廊下に響き渡った。 「三組から五組までにいる生徒は、すぐに南側の教室から避難。教室から出て、廊下で待機してろ」  俊彦もすぐに二階に向かって、南側にある三つの教室にいた攻撃部隊を移動させた。 「全員、教室から出て廊下で待機」と叫びながら、二階の端っこまで走った。  砲撃は一時間以上にわたって続いていた。作戦本部の職員室は三発の直撃弾を食らって、ほぼ壊滅した。ただ、避難が早かったので人的な被害は皆無だった。そのほかに、二階の四教室、三階の二教室が使い物にならなくなった。二階のうち、三組と五組は爆発の衝撃で床も抜けた。三階の四組は砲弾が教室を突き抜けて廊下にまで達した。幸い生徒は近くにいなかったので、けが人はなかった。屋上にも一発被弾したが、天文部は無事だった。無傷なのは四階だけ。稜南大四はその間、ひとつの反撃も加えることなく、ひたすら攻撃に耐え続けた。
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