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砲撃がいつ止むのか見当がつかなかったので、壁に開いた大穴を塞ぐこともできなかった。朝から降り始めた雪は、次第に風を伴って吹雪模様に変わりつつあった。校舎に開いた虫食い穴からは寒風とともに雪も吹き込んできた。
「このまま黙っていたら、校舎が全て破壊されてしまいます」
新たな職員室になった三階の講堂では、教員たちが作戦会議を開いていた。青柳校長は腕を組んだまま、じっと椅子に身を沈めている。
二年五組への直撃弾で、三人の生徒が重軽傷を負った。死者こそいなかったが、腕を骨折した生徒が二人、脚の折れた生徒が一人。甚大な被害だった。
作戦会議は重苦しい空気に包まれていた。
「こちらに敵意がないことを相手に伝えるべきだと思います」
沈黙を破り、立ち上がったのは社会を担当している的場直樹(まとば・なおき)だった。
「我々は誤解されている。まずは敵対勢力でないことを理解してもらわねば」
「それは無理だな」
声を発したのは谷地頭だ。
「捕えられている三人の先生は、それを必死に説明したはずだ。奴らはそれを全く理解しなかった。そして、昨日、副総裁という偉いお方が、私に一撃で打ち倒された上、矢で射られた兵隊が何人もいた。これ以上の敵対行為はない。敵はカンカンになってる。今さら何を言っても、聞くもんじゃない」
「ですが、このままだと校舎が破壊され、いずれ総攻撃を食らいますよ。白兵戦になったら、生徒たちはどうなるんですか。籠城ならまだ可能性はあると思ったが…」
「どんなに大砲を撃ちこまれても、鉄筋コンクリートの校舎はそう簡単にやられない。敵はいずれ我慢しきれずに攻めてくる。それを水際で追い払うしか、学校を守る術はない。そもそも打って出るなんてこと、できないんだから」
谷地頭はそう言い切ると、的場先生を睨みつけた。
「しかし」
的場先生も怯まなかった。
「このままでは、やられ放題だ」
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