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生徒たちの行き来で、学校内が騒がしくなっている中、化学の鍛冶先生は、野球部の陣川大輔らを極秘に呼んだ。
「君たちには重要な任務を与える」
鍛冶先生は大輔の手に小さなボールを手渡した。大きさはソフトボールくらい。アルミホイルで包まれ、一カ所から導火線のようなものが突き出ていた。
「これはテルミット反応を利用したビックリ玉だ」
大輔はちょっとびびった顔を見せた。
「心配することはない。普通なら爆発も炎上もしない。アルミニウムと酸化鉄の粉末を混合して練り固めたものだ。だが、ひとたび反応すると、爆発的に三千度の熱を発する」
「これを投げつけるんですか」
「敵を怯ませるには充分だ。野球のボールを投げるよりは効果がある」
大輔は手の上でボールを転がした。
「火をつけて三つ数えた後に投げるんだ。敵の頭上で爆発すれば成功だ」
「ちょっと軟らかいですね」
「硬球のようにはいかんさ。でも、お前ならこれでもストライクは投げられるだろう」
「もちろん」
大輔はじっとボールを見た。
「三階の奴らの仇をうってやりますよ」
鍛冶先生は大輔と控えのピッチャーにテルミット弾を与え、残る野球部員に火炎瓶を渡した。
「頼むぞ。このビックリ玉が相手をびびらせられるかどうかが、みんなの運命を左右する」
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