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「待ってました、今だ、行くぞ」
伸二が合図すると、十人ほどの生徒が再び教室に入っていった。撃ってきたということは、鉄砲隊が大砲の射程内に入ったということだ。仲間を砲撃することはさすがにないだろう。伸二が慎重に隙間から窺うと、鉄砲隊はもう校舎のすぐ目の前まで来ていた。
「いいか、一撃必中だ。息を合わせて一斉に撃つぞ。一射したら、相手はここ目掛けて撃ってくる。すぐに隠れるんだ。分かったか」
盾になるロッカーの陰に身をひそめている部員が無言で頷いた。皆顔面が蒼白だった。
「よし、構え」
伸二の掛け声に合わせ、全員が弓を引き絞った。
「放てえ」
合図と同時に、十本の矢が一斉に窓の外に飛んで行った。その行き先を確認する間もなく、生徒たちはロッカーの陰に身を隠した。
「当たったのか…」
誰かが小さな声でつぶやいた。
その直後、七組の教室が一斉射撃された。窓ガラスが割れ、ロッカーに銃弾が食い込む音が雨のように降り注いだ。だが、稜南大四も負けてはいない。五組の教室から別の部員が攻撃を仕掛けたのだ。
「よし、今度はこっちだ」
五組の攻撃を察知した伸二は再び矢を弓にセットした。敵の鉄砲隊は五組の教室に気を取られている。次々と別の教室から波状攻撃を続けるしかない。
「狙え」
今度は構えている時間がさっきほどは長く感じられなかった。
「放て」
七組とほぼ同時に、六組からも十数本の矢が飛んだ。すぐに隠れたので、命中かどうかは判然としなかったが、外からは鉄砲隊が混乱している様子が伺えた。指揮官らしい男が何やら怒鳴っているのが聞こえてきた。鉄砲隊からの反撃は、一発目ほどの弾数はなかった。攻撃の範囲が分散したせいだ。
「一気に攪乱するぞ」
伸二が目配せすると、弓道部主将の中道恒世(なかみち・こうせい)が立ち上がった。
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