7.反撃

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 二階の弓矢、三階の投石と火炎瓶、屋上からのテルミット弾。生徒たちは優れたチームワークで奮闘した。敵も苦し紛れに鉄砲を撃ちまくってきたが、狙いは定まらず、弾のほとんどはコンクリートの壁に阻まれた。 「退けい、退けい」  最初の攻撃から一時間ほどたった頃合いだろうか、先ほどから兵士を怒鳴りつけていた男が唐突に叫んだ。  屋上から宇賀浦の弾んだ声が届いた。 「敵は撤退していきます」  校舎全体から大きな歓声が沸き起こった。七組の教室にいた部員たちも、隣の生徒とハイタッチをして喜びを分かち合った。  だが、喜びは束の間だった。敵は再び遠距離からの大砲攻撃に切り替えたのだった。指揮官なら当然の判断と言える。味方の損失を減らすには、これが一番の方策なのだ。 「しかし、何で突撃してきたんだろう」  稜南大四高の攻撃隊は再び、砲撃を避けるために教室を出て、安全な場所で待機している。伸二はアーチェリーを胸にしっかり抱えていた。 「何でって」  唐突に伸二がつぶやいた言葉の意味が、俊彦には分からなかった。 「だって、大砲で遠くから撃つだけなら、味方の損失はゼロだったはずだ。続けていればリスクゼロでこの学校を破壊できる。それなのに鉄砲隊を前に進めて、痛い目に遭った」 「それは…。早くこの学校を攻め落としたかったんじゃないか」  俊彦がそう言うと、伸二は考え込むような表情を見せた。なぜそんなことにこだわるのか、俊彦には分からなかった。 「そう言えば…」  伸二が突然思い出したように顔を上げた。 「朝のうちに街道を北に向かった部隊があったよな」  俊彦も思い出した。 「今、俺たちを攻めているのとは別の部隊のことだな」 「そう、奴らはどこに行ったんだろう」 「さあ」  伸二は俊彦の方に向き直り、しっかりとした口調で言った。
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