225人が本棚に入れています
本棚に追加
その頃、臨時職員室となっている講堂でも作戦会議が開かれていた。
「籠城は甘んじて校舎の破壊を招く、戦略的にも敵を利するだけです。敵を攪乱しなければ、活路は開かれません」
打って出る遊撃作戦を主張していたのは当然のごとく谷地頭先生。主張の趣旨は柏木伸二とほぼ同じだ。
「身を守る術を持たせないで、鉄砲や大砲の矢面に立たせることは許可できません。何か別の方策を考えるべきです」
強硬な谷地頭を前にしても、青柳校長は一歩も引かなかった。
「生徒が駄目なら、私たちが行きます。今必要なことは、我々がいつでも攻撃に移れるんだという意思表示なんです」
谷地頭の鼻息は荒かった。撃ち込まれた大砲の弾の数だけ、戦闘心が充電されているようだった。
「生徒たちを、この学校を守るために、行かせてください」
谷地頭は祈るような表情で、青柳校長に詰め寄った。
「先生の気持ちは痛いほど分かります。ですが、無防備で敵と接触するという状況に変わりはない。私はあなたたち先生も失いたくはないのですよ」
「ですが、校長。このまま砲撃を受け続けたら、いくら頑丈な校舎でも今日中には破壊されてしまいます。校舎が崩れたら、敵はなだれ込んできます。それこそ殺戮のし放題だ。校舎あっての安全なんです。今すぐに奴らの気をそらさないと…」
「それは分かっています」
青柳校長は腕を組み、黙考した。作戦会議は八方塞がりの様相を呈した。
最初のコメントを投稿しよう!