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「おい、みんな大丈夫か」
俊彦が気を取り戻したのは、担任の高松が教室に入ってきてからだった。
頭を抱えながら、何とか立ち上がった俊彦は、教室内を見渡し愕然とした。机と椅子が教室内の四方の壁に押し寄せられていた。まるで洗濯機で脱水をした後の衣類ようだ。そのがれきの中から、うめき声が聞こえていた。
「マジかよ…」
俊彦は思わず口にするのと同時に、近くのがれきの下から伸二を引っ張り出した。伸二は目を瞬いている。かすり傷はあるようだが、大きなけがはなさそうだ。
「山形、柏木、手伝ってくれ」
担任の高松が二人に声を掛けた。教室の隅に机と椅子がごちゃごちゃに積み重なっている場所があった。
「美沙、大丈夫か」
伸二が血相を変えて駆け寄った。机や椅子を一つずつ取り除き、日吉美沙(ひよし・みさ)を助け出した。美沙は伸二の彼女だ。
「シンジ君…」
美沙は伸二を見てほっとしたように、再び気を失った。
「すぐに保健室に連れていけ。気をつけていけよ」
高松が指示した。俊彦と伸二が、美沙の両肩を支え、保健室に向かった。
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