4.サバイバル

1/3
225人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ

4.サバイバル

 生徒たちも黙って教室に閉じこもってはいられなかった。三年生三百人と先生十七人の三百十七人が当面生き延びるために、やらなければならないことが山ほどあった。  まずは水の確保。校舎の屋上には大きな給水タンクがある。しかし、停電中なのでタンクへの給水は止まっている。全員が制限なく水を使うと、タンクは二日も経たずに空となる。水の補給が受けられるかどうかは、今、偵察に出た先生次第なのだが、もしダメだった場合に備えてタンクの水は飲用専用にすると、職員室から通達があった。  そこで、重大な問題となるのがトイレだった。 「水洗などという贅沢はこの際、諦めろ」  学校に残った谷地頭先生はこう言い放った。生徒たちは、教室の窓から死角となる校舎北側の草むらに、女子用の仮設トイレを作る羽目になった。男子は反対側の南側に設けることになった。力仕事には柔道部やレスリング部の男子が駆り出された。  水とトイレの後は、食料の問題が依然残っていた。今、学校内にある食料は、購買に残るわずかばかりのスナック菓子。学食にもそれなりの食材はあったが、停電で冷蔵庫や調理器具が使えなかった。家庭科で使う調理実習室には、米が十数キロ残っていた。冷蔵庫の中にも味噌と野菜が少々あったが、全部集めても三百人分としては一日分にも満たない。  だが、最大の“食料庫”は生徒のロッカーと職員室だった。生徒のロッカーからはカップ麺やスナック菓子が大量にでてきたし、職員室の先生方の机の抽斗からも、同じようにカップ麺や菓子類、なぜか酒も結構見つかった。ただ、それでも三百十七人が満足な夕食を取れる分とは言い難い。  谷地頭先生は、それらの食料を全部一カ所に集めると宣告した。 「もしかすると、数日はこれで食いつながないとならないかもしれん。計画的に使う」  強引な措置だったが、不思議と生徒たちから不満は起らなかった。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!