2.大地震、そして

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2.大地震、そして

 その日は進路指導の特別登校日で、三年生だけが学校に来ていた。三年七組の三十人は全員出席し、担任の高松直平(たかまつ・なおへい)と一人ずつ面接をしていた。 「次、トシ」  面接を終えた柏木伸二が山形俊彦を呼んだ。 「どんな感じなんだよ、面接って」  俊彦が訊いた。 「想定通りだよ。この前出した進路希望調査票についてあれこれ聞かれるだけだ。トシは剣道で推薦だから、特に問題ないさ」 「そういうシンジもアーチェリーで推薦じゃないか」  伸二は少し視線を下げた。 「俺の場合はちょっとな…。別の問題があるんで、ちょっと話し込んだ」 「ふーん」 「ちょっぺい先生が待ってるぞ、早く行った方がいい」  俊彦が教室の扉に手をかけ、開けようとしたときだった。突然、地鳴りの音が聞こえたかと思うと、強烈な縦揺れが校舎を襲った。教室にいた女子が大きな悲鳴を上げた。激しい揺れに、俊彦は思わず膝をついた。机や椅子が猛烈な音を立てた。  少しの間我慢すれば収まるだろうという予想に反し、揺れはどんどんと大きくなった。最初の縦揺れが横揺れに変わり、やがて円運動のようにぐるぐると回り始めた。建物がきしんでいる。俊彦は意識が遠のいていくのを感じた。
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