47人が本棚に入れています
本棚に追加
/246ページ
第2章 北の空
「何で濱田百合さんがついて来るの?俺達の旅に。」
蒼汰は味噌汁の椀をまた口の方に持っていきながら言った。
「だって二人だけじゃ喧嘩ばっかりになるし、面倒だから。」
蒼汰は味噌汁をすすって、鮭のムニエルを頬張った。
「確かにな。でも二人が兄妹で一人が他人てのもぎこちない感じだな。」
蒼汰はアボカドサラダを口に入れた。
「まあ、そうだけど。じゃあもう一人他人を巻き込むとか?」
私は糠漬けを食べると急に満腹感に襲われてごちそうさま、と言ってソファーの方へ行った。
「向こうの親御さんの許可がまだおりてないんでしょ?」
母の裕美が野菜ジュースを飲みながら言った。
「まあ、そうよ。仮定の段階の話。」
私はリモコンでテレビの電源を入れると次々とチャンネルを変えた。面白そうな番組はなかったので電源を切った。
「何だよ、お前は落ち着きがないな。人に聞いてから消せよ。」
蒼汰は味噌汁を飲み干すと、ソファーで寝ている私に言った。
「うるさいな。いちいち、だから兄ちゃんと二人で旅行なんて嫌なのよ。」
私はソファーに座り直すとまたテレビの電源を入れた。
「河田光希君はどう?彼は成績優秀で、信用できそうな人柄だし。」
母の言葉に私は間髪を入れずに否定した。
「冗談言わないで、それなら私は絶対行かない!」
最初のコメントを投稿しよう!