何がどうしてこうなったのか

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 交渉決裂、事態進行してしまった日を思い出し、俺は溜息をついた。  霊感のこと、黙っておけば良かった。……いや……。お祓いを頼まなきゃ良かったんだ。そうすれば、こいつは厄介事を俺に持ち込む前に、死霊に精気を吸われてお陀仏していたはず。  あの日―――  風邪をひいたと言ってマスク姿でやってきた彼は、10日前に見た人間と同一人物とは思えないほど、面変わり、様変わりしていた。10日前までは、はちきれんばかりの笑顔と、はちきれんばかりに膨らんだ腹の持ち主だった。でも今は、マスクをしていてもわかる顔色の悪さに加えて、一回り痩せたと思しき体躯。入院するレベルだと事務所の社長に言われていたが、そんな大げさなものじゃない、ただの胃腸風邪だから…と弱々しく笑い、上司の勧めだというのに療養を頑として受け入れようとはしなかった。  俺はあの時、マネージャーの背後に視える、目力がやたらと強い、頬のこけた青白い女に気分が悪くなっていた。なんでこんな悪霊に魅入られたんだ……と額を押さえた俺の脳裏に、田んぼのあぜ道にあった丸い石を蹴り飛ばすマネージャーの姿が浮かんだ。 ―お祓いに行かない? …いや、行けるレベルじゃないな……来てもらおう、霊能者に     
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