救われる世界

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それから為政者は魔物の駆除と剣聖の追跡、それらと並行して魔王について調べた。何百年と世界を揺るがした相手について、あまりにも知らな過ぎたためだ。もしかしたらその力を使えるかもしれない――そんな淡い期待を胸に抱いて。 が、それは魔王に対する疑問を増やすだけだった。あらゆる魔科学を用いても、その魔王の持つ力はわからなかった。一つ分かったことは、魔王には魔物を統べる力などなく、また人と何ら変わらない存在でしかなかった、と。膨大な寿命も力もない、ありふれた一人の人間だった。 その事実は魔王に関わったあらゆる人を困惑させた。ありえない、と。剣聖以外にも魔王と対峙した人は多くいる。ほとんどが魔王の手によってその命を絶たれたが、中には奇跡的に生き延びた人もいた。彼らは総じて告げる。魔王の力は人の域を超えた超常的なものだった、と。 為政者は魔王を過去のものにした。理解できないものだと判断し、もういない存在を無視することにした、そこから始めたのは単純である。自分の国の益、否、自分の益を求め始めた。自身を蝕む魔物を駆逐し、他の人の、国の領土を侵略した。それが始まったのが15年前、聖歴1413年である。小さい国は大きな国に飲み込まれ、それに抵抗した小さな国は手を取り合った。それが繰り返さえ、大きく三つの勢力が生まれた。 一つ、巨大な軍事力を求めたアルバレア帝国 一つ、小さきものが手を結んだフィアル連合国     
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