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「共通の目的があれば手を取りあえる。が、共通の目的がなければ私欲に走る。なら、今この学園でどんな“私欲”が待ってるんだか」
皮肉げに少年が笑う。手を取り合うことを目的とした学園の真実、そんなものはすでにわかっている、と言わんばかりに。
「ここ、いいですか?」
そんな少年の様子には気付かず、一人の少女がボックス席に顔を覗かせる。一人しか座っていないことに気付いたのだろう。礼儀として声はかけたが、少女は既に半身以上ボックス内に入り込んでいる。
「どうぞ」
特に断る理由のない少年は事務的な笑みを浮かべ、それから呆れる。少女がボックス内に持ち込んだ荷物の量に呆れたのだ。大きな鞄が一つに、小物を入れるためだろう、中くらいの鞄が一つ。それに対し、少年はほとんどの荷物を既に学園の寮に送っている。そのため手元の荷物は小さい手提げ鞄一つ。少年が乗った駅から学園は鉄道でも数日かかる距離だが、季節的に汗はそんなに掻かないので一張羅で事足りる。洗濯は出来ないが、シャワールームなども備え付けられているので、衛生的にも問題ない。少年のように遠方から来ているわけでもなければ、必要のない荷物である。荷物を送り忘れて数日分の着替えを手運びしている、とかじゃない限りならないであろう荷物だ。
「ふう」
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