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少女は無理やりその荷物をボックス内に押し込むと、席に座る。一人で二人分の席を独占してしまった。少なくとも少年はそんな真似をしていない。誰も同じボックス内に入ってこなかっただけだ。
「あなたはどこからいらしたんですか?」
一度閉じた本を再度開いた少年に、少女が話しかける。少年は軽く首を横に振り、本をまた閉じてから少女の問いに答える。
「帝都アルガイダからです」
「へえ、帝都からなんですか!ずいぶんと遠くから来たんですね」
少年の答えを聞いて、少女が手を合わせる。そこで初めて、少年は少女の顔を見る。少し童顔だが、宝石のような少女だ。背中まで伸ばしたプラチナブランドの髪をポニーテールで纏めている。少年と同じ赤い瞳が、少年の赤い瞳と交差する。少女も初めてその少年の顔をしっかりと見る。男性としたらあまりにも綺麗すぎる顔を。珍しい髪の色もその綺麗さを際立たせていた。
ちなみにこの列車には帝国からリンクス学園に行く生徒しか乗っていない。その数は現在、30人前後。毎年40人の生徒がリンクス学園に送られているのだ。残り一駅あり、国境近くの生徒は直接学園に行ったりするのでまだ全員が乗っているわけじゃない。が、その生徒のほとんどが国境付近に住んでいる優秀な人物か、それなりに高貴な身分の人である。少年のように遠くにある帝都から来る、という人は毎年一人いるかどうか、程度になる。
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