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「他に遠くから来られた方はいるんですか?」
少女は一瞬、少年の容姿に息を飲んだが、それでも興味本位で質問を重ねていく。ちなみに少年は少女の容姿を見てもなんの反応も示さなかった。
「俺――私の知る限り、首都より遠路を来ている方はいませんね」
少年は普段使用している一人称を使いかけ、慌てて切り替える。相手の方が身分が高い可能性が高いからだ。少年は目を引く容姿をしているが、平民である。奴隷(ほとんどが犯罪者)を除けば、最下位の身分である。身分にうるさい相手なら、一人称一つとってもいらだたせる対象となる。
「無理にかしこまる必要ありませんよ。同じ学生なんですから」
幸い、少女は身分に関して五月蠅い人ではないようだ。最も、この一言でこの少女がやんごとなきお方というのは確定したが。
「私はリュテーヌ・A・エルゼグザです。リュテと呼んでください」
少女、リュテが自ら名乗り出る。間に挟むAはアルバレアのAであり、それを名乗れるのは公爵以上の身分だけである。王家は伝統的にアルバレアを直接名乗るので、実質的に公爵家の人間となる。
「………アクト・フィファーンです。身分はありません」
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