猫村

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               *  目覚めると蚊帳の中にいた。 「夢だったんだ」  ほっとしながら弘樹は目を擦った。  台所の方からおいしそうなお味噌汁のにおいがしてきた。 「坊、よう眠れたか?」  口をもごもごさせてオハマが部屋に入ってくる。 「はい。ありがとうございました」  弘樹は布団をたたんで頭を下げた。  吊るした蚊帳を外すのを手伝い、朝食の準備も手伝う。 「おばあちゃん、なんでここらあたり猫村って言うんですか? 猫、見かけないのに」  茶碗を並べる弘樹に味噌汁をよそうオハマの手が止まった。 「昔はぎょうさんおってそう言われてたんや。けど今はだいぶ減ったなぁ。  坊は猫好きか?」 「はい。すごく好きです」 「そうか、そりゃよかった。わしも作った甲斐があったわ」 「え? 作ったって?」  弘樹は棘のように引っかかった言葉を思わず聞き返していた。 「ネコ団子や。  ここらではご馳走やで、おまんに食べさせたろ思てな。  ゆうべ食べたやろ?」  はははとオハマが笑うと口の中で転がる猫の目玉が見えた。  その笑顔に祖母の笑顔が重なった。
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