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目が覚めたまさしは目の前が真っ暗で自分の状況がわからなかった。
大家に瓶詰を持って行ったのは覚えている。母の手作りだと聞いて、大家の鼻の下が伸びたのも覚えている。
お茶でもと誘われ、部屋に上げてもらって、それから――
ああ、そうだ。急に大家が襲ってきたんだ。避ける間もなく頭を殴られて。
一体ここはどこなんだろう。この音と振動は車の中か。
手足を伸ばそうと思っても動けず、何かにくるまれているみたいだと思った瞬間、
ぷち、ぷち、ぷち――
耳のそばで音がした。
なんてことだ、油断した。
大家にあの村の野菜を分けてしまった。まさか影響するとは――
母さんはオレがそうすることを見越していたのか。
まさしは荷物として運ばれながら、ただ自分の行く末を案じることしかできなかった。
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