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魔法少女ひまわり組の帰郷
背の低い高山植物がまばらに並んでいた。
ジョナサン・エルネストはルイコスタ山脈の裾野にいた。
夏が来ようとしていた。ジョナサンのいたアカデミーは既に夏の様相を呈していたが、ここはほんのり肌寒かった。
本当にいるのか。俺の生徒は。
ジョナサンは、自らが失った生徒のことを思った。
ジョナサンの襟には、ひまわりのバッジが、薄曇りの弱々しい陽光を浴びて、微かに黄色く光っていた。
イシノモリ・ユノの突然の逐電に、アカデミーは人しれず衝撃を受けていた。
ジョナサンは、素直に自身の敗北を認め、一時的な休職を願い出ると共に、ユノを呼び戻す為の助力を求めた。
すぐさま立ち上がったのがアリエール・リトバール、ルルコット・タルボット、エメルダ・パストーリ、アルテミシア・ガイネウス、そして何故か、イゾルテ・フレイアの姿があった。
後に、スライムと魔王までもが加わった。魔王に関してはトラウマが障害となった。
「いたいけな少女に見せてはいけないものがある。ユノ様にはこの命拾われた恩がある。今こそ報恩の時である。トラウマなど何するものぞ」
などと膝をガタガタいわせながら発言した。
ジョナサンが最も意外に思ったのは、愛娘クリステラを抱いた妻のフランチェスカだった。
「私も行くわ。貴方の最初の生徒ですものね。クリステラは多分大丈夫。生まれた時真冬の飛行艇の中だったのよ。リーゼロッテには後を任せたの。私もユノに会いたい。会ってぎゅーっとしましょう。私達の娘みたいなものだし」
クリステラは、全然関係ない魔王を呼んでいた。
今後もっと言葉が増えていく。
ユノは二文字だよな。お前に聞かせてやりたいよ。
ジョナサンは自分を見上げるちっこい生徒のことを思った。
穏やかな、ポカポカした春の牧草のような、ユノの匂いを思い出した。
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