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健気な隷嬢
そこは、どこにあるのか誰も知らない。
経済協力連合の最深部に、総帥であるアトレイユ・エリュシダールの姿があった。
ベッドの上に座り込んだアトレイユの周りでは、女達が意識を失っていた。
「マスター」
鈴の転がるような声がした。
臥待月が、主人を呼ばった。
「何だ」
短く、主人が問うた。その声は冷え切っていたが、どこか沸き立つように昂ぶってもいた。その原因は、傍に置かれた盆の上に走る、白いラインにあった。
「姉上様、マルガレーテ様が、お亡くなりになりました」
「死因は」
震えながら、アトレイユは問うた。
「自害されました」
震えが、馬鹿笑いに変わった。
「あいつらしい最期じゃないか!おい!誰か起きていないか!俺のをしゃぶれ!」
「これ等の女性は?」
彼女達は、酩酊と快楽に溺れていた。一見すると、彼の姉に面差しは似ていた。
「知るか。娼館に放り込んでおけ。ところで、お前の妹は、機械式だったな。お前は何なんだ」
妹、宵待月の話題。もういない妹。
「私は、エリゴール・ゼニスバーグに買われました。つまりは生体ベースです」
ホワイトラインを吸い込む、品のない呼吸音がした。
自身が見出し、姉に流していたものに耽溺していたアトレイユは言った。
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