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貴族への憎悪も、ジョナサン・エルネストへの悪罵も、何もかもが失われた、捨て鉢な凶暴性だけがあった。
「服を脱げ」
臥待月は答えず、眼前の主人の顔を見つめていた。
空虚な何もない力があった。今は亡きルキノ・システィーナの言葉通り,何もない人生を送る主人を、表情なく見つめていた。
「何をしている。服を脱げと言った。こっちへ来い」
臥待月は、メイド衣装を脱ぎ捨ててた。みずみずしい若い娘の裸体があった。
臥待月にのしかかりながら、アトレイユは言った。
「最早姉も貴族もどうでいい。全てを手に入れた。後は、どう終わらせるかだ。俺はルキノとは違う。全て滅ぼす。俺だけが死ぬ結末など認めるわけがない」
ああそうだ。この空虚な殺気は、振われる者を選ばない。
私は、マスターを守るためにいる。マスターの望む存在になる。それだけが、全て失った私の唯一の。
アトレイユのものを唇で愛しながら、臥待月は、そのことだけを考えていた。
彼女の脳裏に妹を倒した存在があった。
彼女は危険だ。
マスターを害し得る者は、排除しなければならない。
口の中に、どろっとしたものが流れ込んできた。
臥待月は、幸福を感じていた。
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