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第3章 ジレンマ
しかし、結果は同じであった。
澄恵はまた助からなかったのだ。
どうしても思い通りにならない。
何故だ?
ならば、澄恵がネックレスを見つける前に戻るしかない。
でもどうしたら、そこに戻れるんだ?
俺は手袋をはめて、その前日の事を頭に浮かべた。
確かあれは…
そして意識が飛んだ。
* * * *
目が覚めると、外は陽気な朝だった。
リビングに向かうと、もう朝食が用意されている。
「おはよう拓郎。どうする?二十六日でいい?」と澄恵が訊いて来た。
そうだった。これは二十二日の朝の話だ。
お互いクリスマスは忙しいので、別の日に食事に出かけようと相談していたのだ。
「そうだな」俺はテーブルについて、コーヒーを一口飲んだ。
「プレゼント、楽しみにしていてよ。ふふっ」と澄恵は笑った。
その笑顔がとても愛おしかった。
俺はそれで今晩、ブラッディに盗みに入ったのだ。
「じゃあ私、先に行くね」と彼女はリビングを出て行った。
俺は少しの間、この静かな空間の余韻に浸った。
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