第3章 ジレンマ

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酔っ払いが赤信号なのに道に飛び出してきて、澄恵がハンドルを切り損ねたらしい。 軽のワンボックスは横転して、ガードレールに突っ込んだのだ。 「ありゃあ悪くねえぞ!」と足に包帯を巻いた男が、治療室から出てきた。警官が両脇を固めている。 俺は思わず、目の前の警官を押しのけた。 「ちょっと、君!」 俺は男の襟首を掴んで「お前よくも、よくも澄恵を!」と拳を振りかざした。 「おい、やめるんだ!」二人の警官が俺を押さえつけた。 俺はまだ男を睨み続けた。 年は五十歳位か?白髪混じりで、顎に大きなほくろがある。太々しい顔をしていやがる。 酒臭いにおいが、余計に腹が立った。 「さあ来るんだ」男は警官に連れて行かれた。
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