0人が本棚に入れています
本棚に追加
第4章 12月18日
一年前、俺は交差点で男を拾った。
年は三十中頃か?黄色い縁の眼鏡に、洒落たスーツを着込んでる。膨よかな体型は、若手の相撲取りを連想した。
「あ、ちょっとここで待ってて」と言われ、俺は花屋の前で停めた。
男は何やら女性スタッフと話している。
男はあれこれと花を指差しながら嬉しそうだ。
綺麗な人だな。
俺は彼女をずっと眺めていた。
すると「お待たせ」と男が戻って来た。
「綺麗ですね」俺は花の事を言った。
すると男は「そうだろ?綺麗な子だろ。澄恵ちゃんって言うんだ。もう一週間通ってるんだけど、中々なびかないんだよな。花を好む男性がタイプと思うんだけどなあ」などと、ほざいてる。
「じゃあその花はどなたに?」と質問すると男は「知らないよ。買うのが目的なんだから」と自慢げに笑っていた。
馬鹿かこいつ。
それから二日後、俺は澄恵の事が気になって近くに車を停めて、遠くから眺めていた。
いやいや、俺の方が馬鹿だな。これじゃストーカーだよ。俺は車を降りて、タバコを買いに花屋の並びの店に入ろうとした。
すると花屋の前で、ガッシャンッ!と騒ぎが聞こえた。
「邪魔なんだよ!」とチンピラ風の男が、鉢植えの塊を蹴り落としていた。
そして男は、澄恵を突き飛ばした。
「きゃっ」
澄恵は散らばった土の上に転がった。
その時、俺は何故か頭に血が上っていた。
最初のコメントを投稿しよう!