第4章 12月18日

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俺はその男の前に立ちはだかった。 「詫びろよ。そしてちゃんと金を払え」俺はそう言った。 「何だお前は?正義ぶってるつもりか?」男は急に右足を蹴り上げた。 俺はすかさず、その足を小脇に抱え込んだ。 何年泥棒家業やってると思ってんだ? そんなノロマなスピードじゃ、ハエも止まっちまうぜ。 俺はその足を真上に持ち上げた。 「うわっ!」 男はたちまち、背中から地面に叩きつけられた。 そしてそのまま、腕を後ろにねじり上げる。 「痛たたっ!やめろ、折れちまう!」と男はじたばたと喚いている。 目の前で、澄恵がぽかんと見ていた。 「これ全部でいくらですか?」と俺が訊いた。 「はっ?」澄恵は目をぱちくりさせている。 すると奥から店長らしき女性が、電卓を弾きながら出てきた。 「ええっと、締めて三万五千円です」 俺は男の懐から財布を抜き取り、四万円を女性に渡した。 「あっ、てめえ!」と男が反抗したので、また腕を締め上げてやった。 「痛たたっ!お釣りはいいです」と男はすごすごと退散して行った。 「あの、ありがとうございます」と澄恵は頭を下げてきた。 「いや、別に」と俺は頭をかいた。 「ズボン、汚れちゃいましたね」と澄恵は、俺を店の中へ入れてくれた。 それが初めての、二人の会話だった。
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