第5章 真実

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「ううっ」腹に痛みが走った。 包丁は俺の腹の上に、深く突き刺さっていた。 「ば、馬鹿が」男は狼狽えて立ち上がろうとしたが、俺は足にしがみついた。 「離せよ!この死に損ないが!」と男は、俺の顔面を何度も蹴りつけた。 「拓ちゃん!」澄恵は側でおののいている。 くそっ!死んでも離すもんか。 お前を野放しにしたら澄恵が、澄恵が… もう意識が失くなってきた。 すると周りが、騒がしくなって来たと思えば 「おい!抵抗するな!」と警官がなだれ込んで男を押さえ込んだ。 やっと来たか… 死ぬってこんな感じなのか? 「拓ちゃんしっかりして!」 目の前に澄恵が見えた。 やっぱり相変わらず眩しいや。 「あいつは…捕まったのか?」 俺は小さく呟いた。 「うん。もう大丈夫よ」澄恵は涙ぐんでいる。 良かった。 本当に良かった… そして俺は、手足の感覚すら何も感じなくなっていた。
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