第1章 別れ

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澄恵があのネックレスを欲しがっていたのは知っていた。しかし今の自分の稼ぎでは、とても手に入らない事も分かっている。 初めてのクリスマスにプレゼントしたいと言う思いから、つい昔の癖が出ちまった。 あれだけ澄恵と約束したのに… 「だったら捨てちまえよ!」俺は心にもない事を口走り、そのまま家を飛び出した。 くそ!今年は暖冬と言ってた割に、雪がチラついていやがる。 俺は駐車場に停めてある、黄色い車に乗り込みエンジンをかけた。その車の側面には " 青空タクシー " と書いてある。 俺はもやもやした気持ちで、街を流した。 「何でこうなっちまうんだよ!」 だがそんな気持ちも、夕方頃には頭の中が冷静になってきた。 やはり、帰ったら謝ろう。そりゃあ澄恵の言う通りだ。盗んだ品など嬉しい筈がない。 客も余り捕まらないし、今日は早めに切り上げるか。 そう思っていると携帯が鳴った。時計を見ると、夜の八時を過ぎていた。 車を路肩に停めて、携帯の画面をタッチした。 ( あのう、菱見さんの携帯ですか?こちらは××署の者ですが ) 俺は何の事だか分からなかった。 「そうですが?」 ( 滝田 澄恵さん、ご存知ですよね?実は澄恵さんが亡くなられまして… ) こいつ、何を言ってんだ? 俺はすぐには理解出来なかった。
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