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澄恵があのネックレスを欲しがっていたのは知っていた。しかし今の自分の稼ぎでは、とても手に入らない事も分かっている。
初めてのクリスマスにプレゼントしたいと言う思いから、つい昔の癖が出ちまった。
あれだけ澄恵と約束したのに…
「だったら捨てちまえよ!」俺は心にもない事を口走り、そのまま家を飛び出した。
くそ!今年は暖冬と言ってた割に、雪がチラついていやがる。
俺は駐車場に停めてある、黄色い車に乗り込みエンジンをかけた。その車の側面には " 青空タクシー " と書いてある。
俺はもやもやした気持ちで、街を流した。
「何でこうなっちまうんだよ!」
だがそんな気持ちも、夕方頃には頭の中が冷静になってきた。
やはり、帰ったら謝ろう。そりゃあ澄恵の言う通りだ。盗んだ品など嬉しい筈がない。
客も余り捕まらないし、今日は早めに切り上げるか。
そう思っていると携帯が鳴った。時計を見ると、夜の八時を過ぎていた。
車を路肩に停めて、携帯の画面をタッチした。
( あのう、菱見さんの携帯ですか?こちらは××署の者ですが )
俺は何の事だか分からなかった。
「そうですが?」
( 滝田 澄恵さん、ご存知ですよね?実は澄恵さんが亡くなられまして… )
こいつ、何を言ってんだ?
俺はすぐには理解出来なかった。
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