第2章 12月23日

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すると持ち上げた瞬間、重かったケースが急に軽くなって、俺はケースを抱えたまま尻餅をついた。 「ありゃ?どうなってんだ?」 「はっはっは、いやあ、済まん済まん。手袋を汚した様じゃな」 右手を見ると、白い手袋が泥で汚れていた。 「まあ、大丈夫ですよ」と俺は起き上がり、ズボンを叩いた。 「お詫びに新しい手袋を進呈しよう。後悔しないようにのう、菱見 拓郎君」 俺はキョトンとして、老人を見た。 「え?どうして俺の名前を?」 「メーターの上に書いておろうが。はっはっは」と老人は、笑いながら行ってしまった。 俺は呆然とじいさんを見送っていた。 何なんだあのジジイは? 俺は運転席に座って、ルームミラーを調整し直そうとした。すると、ミラー越しに後ろの座席に何かを見つけた。 「忘れ物かよ」と振り向くと、白い布地の手袋だった。 手に取って見るとかなりダボダボで、大き過ぎて俺の手には合わない。 しかも右手の片方だけだった。 「何で両手じゃ無いんだよ。それになんだこの文字は?」 甲の部分に、アラビア語みたいな文字が赤色でいくつか書いてある。 「全く読めねえし」 俺は手袋をダッシュボードに入れようとした。すると何かメモが落ちた。 " グローブを装着し、指を鳴らせ " と書いてあった。 どう言う意味だ?グローブってこの事か? 俺は試しに、その手袋を右手にはめてみた。
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