喫茶店

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ブラックを口に含んだ。その強い刺激臭と苦味が眉間にシワを寄せる。 しかし、いっこうに眠気が覚めることはない。 それどころか、目まで回りだした。 目蓋が重力に引かれるように気が付けば眠っている。 このままでは車の運転は危険と考え、僕はこの席で仮眠をとる事にした。 腕を枕に机に伏せて目をつぶった。 体が水の中でプカプカ浮く感覚……それでいてひどく頭が重い……。 体も動かない、金縛りか? 目はつぶっていて真っ暗と思っていた矢先、急に目がくらむ程の光が目蓋を貫いて目の前を真っ白に染め上げた。 白い靄の様に光は徐々に視界から消え、清々しい程さわやかな、木漏れ日のある晴れた日の日中を映し出した。 この風景には覚えがあった……。 僕を今、木陰で包む大きな木。 コンクリート造の窓の多い四階建て。 ここは、僕が高校生の時、初恋の人に最初に告白した校舎裏だった……。 何で今更……? と言うか、先程まで雨が降っていたはず。 僕は服を見渡した、服装が変わっていた。これは、高校時代のブレザーだった。 更には手足が細い。 大学時代のハードな部活で傷ついた腕が綺麗だし。 夢にしてはリアル過ぎる。 こ、声は出せるのか? 「あ、あ~……」 もっと強く……! 「あ"ー!」 その時だった……、目を丸くしてピョコンと飛び出す様に現れた一人の女子高生。 髪はショート、どちらかと言うと丸顔、 胸のボタンを少し開けルーズに垂れ下がる赤いリボン。 緑のチェックのスカートは短く、スニカーを履いた元気のよさそうな女の子がそこにいた。 「久しぶり……」 心から呟いていた。 恥ずかしいほど声を出していたことも忘れ。 初恋の人の昔のままの姿に心から呟いていた。
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