赤ワイン

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赤ワイン

 サイコパスは、ワインを口にして一言。  ――美味い!  ワインは、赤と白があるが、私はもっぱら赤が好きだ。  渋みとコクが口の中に広がっていき、舌の上の10,000個の味蕾を刺激する。  その瞬間、欲しくなってしまうのだ……厚めの極上肉が。  君たちだってそう思うだろ。  サイコパスは、想像しただけで口の中に肉のうま味が広がってくるようだ。  だが、なぜ、赤ワインと肉が合うのだろうか……? よく考えれば、葡萄酒と肉が合うなんて不思議な話だ。  だってそうだろ。  酒は抜きにして、ブドウと肉を同時に食べて美味しいだなんて感じるわけがない。  だったら、なぜ、葡萄酒と肉は合うのだろうか……?  白ワインは合わないよな。完全に合わないというわけではないが、それでもやはり、白は合わん。  肉と合うのはやはり――赤だ。  赤しかないのだ。  赤ワインと肉が口の中でぶつかり合い、肉に染み込んだワインが、噛んだ途端に噴き出してくる。  それは、まるで、生身の人間を粉々に吹き飛ばす様に等しい。  なかなか現実では行うことのできない、許されざる行為、その姿が、口内という誰にも見えない環境で、当然のように行える。  ――素晴らしいことではないか。  してはいけない、そういった背徳感があるからこそ、人々は血に飢えるように赤ワインと肉を同時に欲するのだ。  サイコパスは、これからワインを口にする度に思うことだろう。  ――いかに人間が、バイオレンスな生き物であるということを。
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