お大事に!

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「どうだ? 具合は」  おかげで随分いいみたい、と圭は半身を起こした。 「夢を見ていたよ」  熱のあるときに見る夢なんて、ろくなものはない。隼人は肩をすくめた。 「どんな悪夢を?」  ふふっ、と笑って圭はいたずらっぽい眼をくるりと動かした。 「インチキ医者に、太い注射をされる夢」  隼人は、大げさに首を振って見せた。 「そんな夢、早く忘れちまえ」 「忘れられないよ。だって、初めてだったんだから」 「うッ……」  風邪をひいて寝込むと、圭はよくあのときの話を蒸し返す。  何も知らない無垢な子どもを言葉巧みに丸め込んで、純潔を奪った隼人『先生』の話を。 「くだらねえ事は、忘れろよ」 「くだらない? 僕の初体験を、くだらない事と?」 「あ~……」
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