7人が本棚に入れています
本棚に追加
ミクロの世界は、自分たちが普段認識しているマクロの世界では到底考えられない、観測されて初めて白か黒かが決定するという確率が支配している世界である。それらは同じ世界上であるのにも関わらず、大きいか小さいかの違いだけでそこまで常識が変わってくるのだ。
だから俺はこう考える。
何かの拍子に突然、マクロの世界の常識が確率で決まるミクロの世界と入れ替わったりするのではないか、と。これは机上の空論ではなく同じ世界ならば十分に考えられる話であり、可能性はゼロではない。いや、そもそもこの世界がミクロの世界でないと誰が証明できるというのか。極論だと言われればそれまでだが、あの20世紀最大の理論物理学者アルベルト・アインシュタインも一般常識として考えられていた世の中の定理をぶち壊し、相対性理論を完成させたのだ。呪文を唱えると確率で発動する世界。こんなことを考えるなんて世界で俺だけかも知れないが、十分にありえる話なのである。
「ククク、いまさら気づいてもオセー。なぜならこの本が最後の一冊だったンでなあ」
蚊が俺の真横を堂道と通り過ぎて部屋に侵入。寝静まった頃を見計らって吸血するつもりなのだろうか。その前に殺虫してやる、と心のどこかで誓いを立てる。
夜の湿った空気を肺に満たして詠唱体勢をとり、
最初のコメントを投稿しよう!