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再び65ページを開ける。同じような失敗を繰り返さぬようくまなく読んだつもりであったが、人間というものは、そういう時に限って致命的なミスを犯してしまうものだ。呪文のスペルに間違いはなかったか、但し書き注意書きは記されていなかったかを入念に読み返してみる。ところが一字一句間違えておらず、注意文も書かれていなかった。
「ま、まさか……ッ!」
ここにきてはじめて盲点に気づく。これまでのパターン化されたページ割りに、まさかそんなことはないだろうと高を括っていたのだ。
嫌な予感を抑えつつ、恐る恐る次のページをめくる。
※ぶわはははマジで唱えよったぶわははは! おっと失敬。遅いかもしれないが、男が唱えるとかなりキモイのでやめたほうが無難だぞ。効き目はそうだな……あ、場所を選んだ方がいい。たとえばコミケとかそっち系の連中が集まる所で唱えると威力を発揮する呪文だからな。以後気をつけてね。
ビリ。
怒りのままに破ろうとして思いとどまり、背表紙から2ページ目の角河文庫発行人山口昇と書かれた所を燃やしつくさんとばかりに睨みつけ、
「クゥッソォォォ俺の行動見透かしてやがンのかこのクソ発行人があッ! いっそマジで燃やして……いや、ここで引き下がれば男が廃る。上等だ、この際行き着くとこまで行ってやっからヨオ」
ニートの俺にとって夜は長いが、もたもたしていると食事に行った両親が帰ってくる。その前に呪文を発動させ、この世界を変えなければならない。
――それが俺の使命。
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