1、ヴァンパイア・クレーマー

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 それを問いつめる前に、 「だがね、君。それでもやはり、君はアイドルをおろそかにしている」 「シューくんの評判を知らないのか? これでも人気あるんだがね」 「そりゃあ、あるだろうさ。君のアイドルの演技は完璧だからね。だけれども、それは演技だ。本当の顔じゃない。君の素顔は、私に今見せている、それ、だろ」 「だったらなんだよ」 「君のやり方を否定するつもりはない。だけれども、私が君を俳優と言うのは、いい意味だけではない。君はアイドルではない。その証拠に、君はレンに勝てない」 「お前がレン担当なのは十分わかったから!」  なんでここでレンを持ち出して来るんだよ、嫌なやつだな。 「君のアイドルとしての地位は底辺だ」 「ほっとけ」 「俳優としての君は評価している。今のままでも、確かにいいのかもしれない。でも」  そこでダイアナは少し口ごもり、 「……もうちょっとアイドル業を頑張ってもいいんじゃないか、と思うよ」  早口で言った。  ずばずばものを言う彼女の、珍しい態度に少しキョドる。  そうしている間にも、ダイアナは気を取り直したかのように、 「ヴァンパイア・キッス、視聴率ランキング五位に入っていたじゃないか」  ドラマの話に軌道修正する。  しかし、視聴率ランキングまでチェックするとは。だから人間社会に馴染み過ぎだろ。 「おかげさまでな」 「君の努力が実を結んだんだろ」  ダイアナがふわりと、微笑む。素直に努力を認められると、照れくさい。 「収録はあと、二話分だったか? まあ、あと少し、精一杯頑張らせてもらうよ」  ……そうか、撮影が終わったらもう、ダイアナには会えないのか。胸の奥が少し、苦しくなる。 「ああ、そうそう」  そんな俺に気づくことなく、ダイアナはその形のいい眉を吊り上げた。 「前回の吸血シーン。あれはなんだね。あんなところに噛み付いて」 「首筋だろ?」 「首筋だからこそ、場所を選べと言っているんだ。動脈の関係上、下手なところに噛み付くと血があふれてスプラッタだぞ?」  吸血鬼がスプラッタとか言うなよ。
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