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それを問いつめる前に、
「だがね、君。それでもやはり、君はアイドルをおろそかにしている」
「シューくんの評判を知らないのか? これでも人気あるんだがね」
「そりゃあ、あるだろうさ。君のアイドルの演技は完璧だからね。だけれども、それは演技だ。本当の顔じゃない。君の素顔は、私に今見せている、それ、だろ」
「だったらなんだよ」
「君のやり方を否定するつもりはない。だけれども、私が君を俳優と言うのは、いい意味だけではない。君はアイドルではない。その証拠に、君はレンに勝てない」
「お前がレン担当なのは十分わかったから!」
なんでここでレンを持ち出して来るんだよ、嫌なやつだな。
「君のアイドルとしての地位は底辺だ」
「ほっとけ」
「俳優としての君は評価している。今のままでも、確かにいいのかもしれない。でも」
そこでダイアナは少し口ごもり、
「……もうちょっとアイドル業を頑張ってもいいんじゃないか、と思うよ」
早口で言った。
ずばずばものを言う彼女の、珍しい態度に少しキョドる。
そうしている間にも、ダイアナは気を取り直したかのように、
「ヴァンパイア・キッス、視聴率ランキング五位に入っていたじゃないか」
ドラマの話に軌道修正する。
しかし、視聴率ランキングまでチェックするとは。だから人間社会に馴染み過ぎだろ。
「おかげさまでな」
「君の努力が実を結んだんだろ」
ダイアナがふわりと、微笑む。素直に努力を認められると、照れくさい。
「収録はあと、二話分だったか? まあ、あと少し、精一杯頑張らせてもらうよ」
……そうか、撮影が終わったらもう、ダイアナには会えないのか。胸の奥が少し、苦しくなる。
「ああ、そうそう」
そんな俺に気づくことなく、ダイアナはその形のいい眉を吊り上げた。
「前回の吸血シーン。あれはなんだね。あんなところに噛み付いて」
「首筋だろ?」
「首筋だからこそ、場所を選べと言っているんだ。動脈の関係上、下手なところに噛み付くと血があふれてスプラッタだぞ?」
吸血鬼がスプラッタとか言うなよ。
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