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「ありがとう!」
ダイアナはレンのサインを胸に抱き、恋する乙女のようにうっとりとした。
ないない。レン担当だとかいう吸血鬼を好きになるなんてない。自分に言い聞かせる。っていうか、うっとりと見過ぎだろ。
「……まさかとは思うが、レンのサインが欲しいから俺に近づいたんじゃないよな?」
胸のどこかにわき上がって来た黒い気持ちを受けてそう尋ねる。
「何を言っているんだね、君は」
もの凄く冷たい目を向けられた。ソファーに座った彼女は、立っている俺を見上げているのに何故だろう。見下されている。
「これはついでだよ。私は、俳優の上条修司に用があって来ているのだよ?」
ふーん、と信じていないような顔をする。だけど本当は、小躍りしたいぐらい嬉しい。レンはついでだ。そして、俺は、俳優だ。
ダイアナのいいところは、俺のことを俳優として扱ってくれるところだ。まあ、アイドル扱いしないのは、推しメンじゃないからかもしれないが。それでも、嬉しい。
アイドル扱いしないので、NenAturaのシューくんを演じなくていいことも、心地よい。
ダイアナにとって俺は、上条修司だ。
「なにか勘違いしているようだから言っておくが」
俺の表情からなにかを読み取ったのか、ダイアナは冷たい目でこちらを一瞥して続ける。
「私は君のことをアイドルだと思ったことはない。それは、決していい意味ではない。君は、アイドルをただの足がかりにしている」
「それの何が悪い?」
開き直ったわけじゃない。本気でそう思う。それの何が悪い?
「顔がいいからアイドルグループに入れた、それも俺の才能だ。それを、俳優になるために利用して何が悪い?」
正面切って答えたら、
「……まあ君の、そういう目的のためには手段を選ばない部分も好きなんだがね」
苦い顔をしてダイアナが呟く。
まて、今、後半、聞き捨てならないことを言ったような?
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