また明日

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「でもまあ、安心しな! ね?」  弥生ちゃんが突然そう言って、私の肩を力強く叩いた。あんまり力いっぱい叩いたので、肩がビリビリした。 「今の私は独身のニート! それでも、清々しく生きてる。もし独身のニートになって田舎に帰ってこなかったら、けいちゃんと再会できなかった。けいちゃんも今を無視して過去に逃げて来たから私と再会できた。昔ケンカして疎遠になったとは思えないほど仲良く話せたでしょ。ケンカの詳しい内容は忘れちゃったけど、私は今日が来るまでずっとモヤモヤしてたんだよ。けいちゃんだってそうじゃないの? だから、時間が動き出すのはこれからだと思うよ」 「……そう。ありがとう。なんか……うん。ありがとう」  私が若干引いているのもお構いなしに、彼女は続ける。 「それに、もし仮に就職先決まらなかったら、こっちでなんとか出来ないこともないでしょ? 私、一応調理師免許持ってるし、やろうと思えばほら、古民家カフェとかできそうだし」 「まあ、確かに古民家なら腐るほどあるからね。このクソ田舎には」  私は腹の底から笑いが込み上げてきて、それからずっとニヤニヤしていた。  帰り際、弥生ちゃんが小学生用の鉄棒で逆上がりしようとして盛大に地面に頭をぶつけた時、ついに私の笑いの堤防は決壊した。随分と久々に笑った気がした。もしかしたら私はこのまま、無事に現在に引き戻されてゆくのかもしれない。  それから私たちは狂ったように笑いながら、「また明日ね」と言ってそれぞれの家に帰っていった。いつ、どこで会うのかも決めずに。それでも大丈夫だろうという、確かな自信があった。
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