また明日

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 小高い丘の上に、かつて私が通っていた小学校がある。眺めのいい場所で、周りには山と田畑しかない。学校の子どもたちは授業中なのか、裏門の前まで近づいても誰の声も聞こえてこない。虫たちの鳴き声と風の音だけが耳に入ってくる。私はそれを聴きながら、ただぼうっとしていた。 「……けいちゃん?」  突然、明らかに虫でも風でもない声が飛んできた。 「やっぱりけいちゃんでしょ? 久しぶり~」  思いがけない出会いだった。一瞬、時が止まって見えた。そこにあったのは保育園、小学校と同じクラスだった過去の親友の姿だった。 「弥生ちゃん……どうして?」 「離婚してね、こっちに戻って来た。暇だから思い出をなぞる旅にでも出ようと思って、来た」 「はぁ?! 何があったの」  弥生ちゃんはなに食わぬ顔でさらっととんでもない事実を告げた。  彼女は二十歳の時に中学の同級生だった男の子と結婚している。それを機に、過去の些細なケンカが原因でただでさえ切れ掛かっていた私と彼女の縁は完全に切れてしまった。結婚式にさえ、私は出席しなかった。できなかったのだ。どうしても。あれからたった二年足らずで、まさか離婚することになるとは。 「えっと……子どもは?」  私は恐る恐る尋ねた。     
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