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夕日が差すムーンクレイクの街に2つの影が歩を進める。1人は両目を覆う眼帯をしている女でもう一人はごく普通の10代後半の男だった。2人は珍しい灰色の神官服を着ており街の人々からは畏怖の視線を向けられている。先導する女は足どりに迷いは無くたんたんと歩いている。
「ここです。主の力の波動を感じます。ここに間違いありません」
導きの巫女の先導を受けてこの街で一番大きい屋敷の前に立つ。
「ここであなたの力が試されるでしょう。我が主の導きがあらんことを。試練の成功をお祈りしています」
導きの巫女は帰っていった。
「ここで殺人事件が起こるわけなのか、我が神様は知恵と血が大好きだからなぁ・・・。」
つまるところトリック殺人が好きなんだろう。嗜好が偏っていると言うのか、今回の事件が御気に入ればいいのだが。
「まぁベストを尽くしてみるさ」
呼び鈴を鳴らすとメイドさんが現れた。こちらを見て表情が固まっている。
「どうもすいません。私は灰色神殿から参りまして、用件はお分かりでしょうが屋敷の主人にお目通り願えませんか」
メイドさんは何回も頷くと慌てて屋敷に通してくれた。それもそのはず、灰色神殿の神官が来たと言う時点で不吉が起こることは確定している。さらに灰色神殿の神官には捜査権がこの世界で認められている。誰も灰色神殿の神官の神代行捜査に関する点においては拒否することは出来ない。拒否した場合神の呪いが目に見える形で即座に降りかかる。どの国でも同様に捜査可能で、たぶんFBIのような感じなのだろうか。
「本当に始まってしまったけど、この先どうなるっていくのかね」
空には少しずつ暗雲が立ち込めていた。
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