幕開け

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   見たことも無い獣の剥製が置いてある豪奢な応接間に通される。適当に見ていると屋敷の主がやってきた。なんか小さくて丸い小男だ。見た目は50歳ぐらいだろうか。  「どうも始めまして私は・・・」  「知っている!灰色神殿の神官殿だろう。私はこの屋敷の主でフゴーと申す。用件もわかっている。これのことだろう」  一枚の紙を差し出してきた。  「これは殺人予告ですか」  差出人不明の手紙には今夜あなたの命を頂くと書いてある。  「そうだ。今朝届いた。今夜は私の誕生パ-ティを開く予定にしておったが中止にした。こんな紙に振り回されるのは癪だったが」  「賢明なご判断です」  「世辞などいらんよ。ときに神官殿はまだ見習いの神官のようですが」  「さすが知っていましたか。そうです。まだ見習い扱いです」  神官にはランクがあってそれぞれに支給される首飾りが異なる。私がしているのも神官として一番下位のみならいのものだ。そうだとしても神官扱いには変わりないのだが。高ランクほど優秀で実績があり権威があるのだ。  「まぁ、見習いとは言っても神官殿には変わりないわけだから捜査に口を挟む気はない。だが振り払う火の粉はこちらも払わせ頂く。神官殿が来た以上はこの手紙は本物。私が賊を返り討ちにして、すごすごお帰り頂くことになっても文句は言わせませんぞ」  「そのときはそれで構いません」  そのときは我が神から場合によっては罰を受ける可能性もありえる。事件にもならず無様な展開にさえなっていれば問題ないだろうが。  「入れ」  2人の屈強な男が入ってきた。2人とも放たれる気配が尋常ではない。  「コヤツラは金で雇った用心棒よ。それも腕前は折り紙つき。雑魚をいくら雇っても意味はないからな。ロビンの剣の腕前は宮廷指南クラス、多少の魔法も使える。ダンは格闘の達人で武闘大会の優勝者だ」  無駄に人数が増えるよりも少数精鋭のほうがある意味良いかもしれないな。この男も案外バカではない。さすがこの街一番の商会を経営していることはある。  「これで話は終わりだ。用があればメイドのアリッサに任せる。他の家人はパーティ中止の勧告のために方々に出払っとる。今日は帰ってこないだろう」  こうしてフゴー氏との初対面が終わった。
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