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それは数週間前に遡る。
エレナはその日も一人森の奥に作られたこの家で過ごしていた。
その日は来客もなくエレナはのんびりと時間を過ごしていた。お茶を飲み、本を読み、昼寝をして、特に何かやることもなく過ごしていた。
昼寝から目覚めて思い出したのだ。育てていた薬草を収穫に行かなければいけないと。エレナは乱れた薄い茶色の髪を梳かし、すっかりと忘れていた薬草を取りに行く為、家の扉を開けた。
そして一歩踏み出そうとして、危うくそれを踏みつけるところだった。
扉の前には可愛くラッピングされた大きな箱が置かれていた。
エレナは理解が出来なかったのか、ぽかんと口を開けた。こんな森の奥に住むエレナの元へ誰かがわざわざ贈り物だけを置いて去っていく事など今までなかったのだ。もしかすると誰かの落とし物だろうか、と思ったエレナはしゃがみ込みその箱を観察した。
そうしてリボンに括りつけてある宛先を見つけた。驚いたことに宛先はエレナになっていた。正真正銘その箱はエレナへの贈り物だった。
誰からの贈り物か分からない箱だがエレナは嬉しくなり、その箱を抱え上げ家の中へと入れた。すぐに開けたい衝動に駆られたが、取りに行かなければいけない薬草は日が沈むと枯れてしまう物だった。
エレナは興奮する気持ちを抑え、先に薬草を取りに行ったのだ。心の中で箱に、待っててね! と呟きエレナは駆け出して行った。
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